家族ががんになったときに知っておきたいこと

 

私の主人ががんの告知を受けたのは、主人が42歳の時でした。

 

働き盛りで充実した毎日を送り、もともと体力もあったため、癌を発症するこ

となど微塵も考えたことはありませんでした。

 

癌はもっと年齢を重ねてからなるものという漠然としたイメージがあったし

私の家に限って、そのような大変なことが降りかかることはないといった

根拠のない思い込みもありました。

 

早期発見といった段階ではなく、有効な治療法はないという時点での告知で

あったため、告知の日を境に日常の生活が一変しました。

 

幸せな暮らしから、地獄に落とされた心持ちで、自分のまわりだけ時間がとま

ってしまったような感覚でした。

 

・苦しい現実から逃げてしまいたい

・なぜ、こんなことになったのか

・なぜ、私の家族なのか、どうすればいいのか

・今後どうなっていくのか

 

このようなとりとめのない思考がぐるぐるまわり、

一日中心ここにあらずの状態がしばらく続きました。

 

主人は、現状が厳しかったこともあり、絶対に治すといった意気込みは強くな

く、残りの自分の人生を自分らしく、好きなことができるだけできるようにと

いう基準で、それを可能にしてくれる治療法を選んでいきました。

 

「短くても太い人生」を生きたいという主人の思いを聞きながらも、「最悪の

ことがあっていいはずはない、そんなことは起こさせない」というのが私の本

心でした。

正直、主人の気持ちに心から寄り添う余裕はありませんでした。

当時を振り返ると、あきらめることはできない、でも希望も持てない、

どう気持ちを奮い立たせればいいかわからない、私の心の拠りどころが欲しい

・・・といった乱れに乱れた精神状態だったと思います。

たられば・・の話しをしても仕方ありませんが、私の気持ちがもう少しでも

強さと落ち着きを保つことができていたなら、主人をもっとよりよい形でサポ

ートできただろうと思うのです。

結果が同じであったとしても、主人の心の支えとなり、最後の家族の時間をも

っと楽しみ慈しむことができただろうと感じています。

そして、その時の思いが、がんと向き合っている方、また、大切な人ががんと

なり、困惑している方々のサポートをしていきたいという原動力となっています。

 

1.がんは珍しくない病気

現在、日本では高齢化が進んでいます。今や2人に1人が一生のどこかでがんになると言われいます。

生活習慣の変化によってがんは誰にとっても全く無関係の病気ではなくなってきています。

 

また今日では、がんの治療をしながら、これまで通りに仕事や通常の社会生活をしている方も多くいらっしゃいます。

「がんになったのは、食生活が悪かったからだ」「家族が気を付けてあげられなかったからだ」などと、過去を振り返ったり、原因を求めたい思いにかられる方もいるかもしれません。しかし、多くのがんの原因は解明されていません。視点を未来に向け、少しずつでも、自分にできることを見つけていきましょう。

2.がんの治療の流れ

大まかな流れを把握しておくことで、どの場面で担当医との面談に家族として同席したらよいかを考えたり、気持ちの準備をしやすくなったりします。

例えば、診断時には、検査結果を踏まえて、担当医から医学的な診断名と、今後の治療方針について話があります。病気を正しく理解するためにも、正式な診断名をご本人と一緒に確認しましょう。また、治療開始までの間に、治療に関わる費用や生活について(仕事や学校、家事、育児、介護など)もある程度考えておくことも大切です。

 

患者側が診断のこと・治療のこと等に関して知識はないのが当たり前です。

そのため、よくわからないから・医師に専門性があるからといった理由で「お任せします

といった姿勢になるケースもあります。

しかし、何より大事な命を託すわけですから、納得できるまで、質問したり、説明を

求めたりしましょう。

治療は数か月、経過をみていく期間などを含めると数年間にわたっていきます。

早い段階から担当医と信頼関係を築くことは、重要な要素の1つでもあります。

敬意をもった姿勢で接することは大切にしながら、きちんと真摯に向き合ってくれる

病院・医師を求めるようにしましょう。

3.がんになったご本人への接し方の基本

多くの患者さんは、がんになったからといって、極端に気を使われたり、無理に何かを言ってもらうことを望んでいるわけではありません。肩の力を抜いて、まずは、診断や治療などのその時々で、ご本人がどのような気持ちでいるか、想像してみましょう。

もちろん、ご本人の気持ちを100%理解することはできません。思いがけない行き違いが生じることもあることでしょう。

それでも、「一所懸命に相手を理解しようとしたこと」「手探りでも、コミュニケーションを重ねていったこと」は、相手に伝わり、そうしたあなたの存在そのものが、ご本人にとって大きな支えにつながります。

 

主人との会話の中で、本人と家族、それぞれの立場の違いで、価値観の違いを感じさせられたことがあります。

状況からして、主人は、現実を非常に冷静に受け止めていましたが、私の

方は、最悪のことなど考えるものではない・・と現実から目を背けていま

した。

けれど、少し気持ちが落ち着いてきた頃、「もしものことがあっても

私ひとりでもちゃんと子供を育てていけるから」と主人に話しました。

話したというよりも、自分の気持ちを奮い立たせるために、思わず口に出てしまった感じです。

心のどこかで覚悟をしながらも、そんなことを言葉にすると、私が

あきらめてしまったと思われ、主人を絶望させるのではないかと心配でした。

「何がなんでも治して・・」と励ますのが、主人を勇気づけることだと思っていたのです。

ところが、その言葉をきいた主人は「その言葉を聞いて安心した。

これで自分が思うような治療法を選択していける」と言ったのです。

もちろん主人も、はなからあきらめていたわけではありませんし、

家族のことを一番に考えてくれていました。

その上で、わずかな可能性にかけて、治療で苦しい時間をすごすより

家族とのいい時間を増やせるような対応をしていきたいと願っていました。

だから、もしもの時の私の覚悟を知って、治療の選択を悔いなくできると

思ったようです。

私が一番口にしてはいけないと思っていた言葉が、主人を一番安心させたのは

、とても意外でした。

これは、たまたまいい方向に向かったけれど、もしかすると、同じ言葉を口に

しても、その時の状況や気分次第で、傷つけることになったかもしれません。

でも、言葉にした分、主人の本心を理解し、葛藤しながらも、その気持ちに寄

り添う時間を増やせたし、同じ方向を見て闘病の期間を過ごせたように思います

 

4.情報はご本人とあなたを支える「力」

がんといっても、その種類や進行度によって状態はさまざまです。まずは、担当医とよく話し、病状を正確に把握することが大切です。疑問点は遠慮せずに質問しましょう。面談の前に、不安なことや聞きたいことをメモにまとめておくと役に立ちます。

その上で、もっと詳しく知りたいと思ったら、自分たちでも調べてみましょう。情報を得ることで、漠然とした不安が軽減することがあります。また、納得のいく決定をすることにもつながります。

 

ただ最近はSNSなどからでも簡単に情報を得ることができ、不必要なものまで取り入れて

しまうこともあります。

たとえば、他の人の症例などは、あたかも自分のケースもそれにあてはまるように感じがです。

情報はあくまで一般的な話や、統計的なもの・傾向・個人の体験の話であって、必ずしも

そうなるものではないといった冷静な判断が大切です。

特に、気持ちが乱れている時は、ネガティブな情報にたどり着きやすくなるので

そういった時には、いったん情報収集から離れることも賢明です。

5.家族は第二の患者

がんが珍しくない病気になりつつあるとはいえ、大切なご家族ががんと診断され、「家族ががんであることを、受け入れられない」などの思いを抱いたり、混乱することはごく自然なことです。

そうした中で、「自分がつらくても、本人はもっとつらいのだから、我慢しなくては」と気持ちを抑えてしまう場合も少なくありません。

その結果、さまざまな不安や気持ちの落ち込みが続いてしまう方もいます.

一方で、そうしたつらさを抱えながらも、仕事や学校、家族の世話や家事など、あなた自身の日常生活を維持していく必要もあるでしょう。

こうしたことから、ご家族は、がんになったご本人と同じかそれ以上に精神的負担がかかる「第二の患者」ともいわれています。ご本人をサポートするためにも、あなたが意識的に自分自身をいたわり、必要な支援を求めることは大切です。

 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP